高齢化が進む日本社会。身近な人を自宅で“看取る”機会も増えてくるだろう。『おうちで死にたい』というタイトルで、患者や家族に寄り添う訪問看護師たちを題材にした漫画を描いている広田奈都美さんはこう話す。
「ほとんどの人が“死ぬならおうちがいい”と思っているんです。特に高度経済成長期を謳歌した高齢者にとって家は特別なステータス。おうちでこそ自分らしくいられる」(広田さん・以下同)
なかでも、コロナ禍で自宅看取りになる人が多いという。
「家族は大変。でも自宅を舞台にすると、家族がご本人と一緒に“死を受け入れるプロセス”を共有できるんですね。もちろん医師や看護師が支えるのですが、家族自身が“私が看取るんだ”って、どんどんたくましくなっていく。その姿は感動的です。やり遂げた後はみんな“やってよかった”と言われます」
病院の緩和ケア病棟なども、自宅看取りのよさを重視して、家族が泊まれるようにするなどの工夫をしているという。
「“これがよい看取り”というテンプレートはありません。家族に囲まれたいという人、ひとりだけで静かに死にたいという人、逝く人が台本を書いているのではと思うほど、自然とその人らしい看取りの形になる。そんないろいろ形があることを、この漫画で伝えたいのです」
そしてもう1つ広田さんが描きたいのは、医師や看護師の並々ならぬ葛藤だ。
「看取りをする医療者の心の負荷は大きい。不安な患者さんや家族に寄り添い、これでよかったのかな?と自問の連続。患者さんが水も受け付けなくなると、そろそろ亡くなるなというのもわかる。命から、言葉にならない大きなものを学んでいます」
『おうちで死にたい』シリーズからは看取りにかかわる人々のリアルな心模様が伝わってくる。ぜひご一読を!
【プロフィール】
広田奈都美さん/静岡県出身。漫画家デビュー後、映画『生きる』に影響を受けて看護師になり、病院勤務のかたわらで執筆。現在はコロナ禍の看護師たちの奮闘を取材中。看護師サイト『看護roo!』ほか、『月刊フォアミセス』で連載中。
取材・文/斉藤直子
※女性セブン2020年12月24号