【書評】『竹中平蔵への退場勧告』/佐高信・著/旬報社/1300円+税
【評者】森永卓郎(経済アナリスト)
最近、竹中平蔵氏のプレゼンスが高まっている。言うまでもなく、菅政権のブレーンとして、竹中氏が復権しているからだ。本書が緊急出版されたのは、そうしたことが背景にあるのだろう。
本書は、全編にわたって竹中批判で埋め尽くされている。これまで一貫して竹中批判を繰り返してきた著者の蓄積が活かされた形だ。その舌鋒は鋭く、読んでいて痛快そのものだ。そして、ネーミングがうまいのも著者の特長だ。「マック竹中」、「パソナ平蔵」というのは、著者の造語だ。
日本マクドナルドの創業者である藤田田氏に取り入ることで、傘下のフジタ未来経営研究所の理事長に就任し、マクドナルドの未公開株を譲り受けた。パソナの南部靖之代表に取り入り、会長職に就任し、報酬は一億円と言われると本書は指摘する。有価証券報告書に報酬の記載がないので、報酬が一億円を下回ることは確実だが、一流企業の会長なのだから、それなりの報酬を得ていることは間違いないだろう。
竹中氏本人によると、南部代表とは、たまたま飛行機で隣合わせになったことで知り合い、同じ関西人として意気投合したということなのだが、本書も権力者に取り入る稀有な才能を指摘している。
竹中氏本人が私腹を肥やすだけならまだよいのだが、竹中氏は国の政策決定に強い影響力を持っている。その政策によって竹中氏のお仲間が潤い、多くの国民にツケが回っているというのが、本書が描き出す基本構造だ。
しかも、それは今も続いている。11月28日の「朝まで生テレビ!」で竹中氏は、「コロナで困窮する大企業を支援するため、産業再生機構のような仕組みを準備すべき」と発言した。官製ハゲタカを作って、小泉内閣の不良債権処理の再現をしようというのだ。
本書は、竹中氏の正体を知るために、最適の解説書だと私は思う。ここに書かれていることは、真実だと思うが、竹中氏が異議を唱えるのであれば、著者を名誉棄損で訴えるべきだろう。そうすれば法廷ですべてが明らかになるからだ。
※週刊ポスト2020年12月25日号