東京地検特捜部の「桜を見る会」捜査で大きなスクープを報じたNHK。安倍晋三・前首相の後援会主催の前夜祭パーティで、安倍氏側が800万円以上を負担したという報道(11月23日)だ。
このNHKの報道によって、安倍政権を引き継いだ菅義偉政権は、打撃を受けたようにも見える。しかし、自民党内には逆の見方もある。
その頃、安倍前首相は活動を本格的に再開し、「私なら来年1月解散」とぶち上げたり、菅氏と総裁選で争った岸田文雄・前政調会長とともに「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」を立ち上げて会長に就任したりなど、「ポスト菅の再々登板に意欲を見せている」と見られていたのだ。
「菅総理にとっては自身の座を脅かす存在になりつつあった。そこにNHKスクープで安倍首相は疑惑渦中の人となり、身動きが取れなくなった」(自民党関係者)
NHKの桜を見る会疑惑報道が、菅首相の援護射撃となったとする見方だ。
そもそもNHKには菅首相を怖れなければならない事情がある。菅氏は総務大臣時代、NHKに受信料2割引き下げを突きつけた。このとき、陰で反対に回った総務省の担当課長を左遷したのだ。
〈改革を実行するためには、更迭も辞さない。困難な課題であるからこそ、私の強い決意を示す必要がありました〉。菅氏は著書『政治家の覚悟』でそう書いている。
この総務大臣時代、菅首相は民放に対しても、電波利用料を大幅に引き上げる考えを表明して大きな反発を買った。
自分に逆らう者には人事権を振るって容赦なく更迭し、民間企業の携帯電話会社にも強引に値下げをさせる。そうした最高権力者の手法を知っているが故に、NHKも、新聞や民放テレビ局も、菅首相の顔色を窺わざるを得ない。大メディアはこの“危険な権力者”に、裏でひれ伏しているのだ。
※週刊ポスト2020年12月25日号