冬の味覚といえば蟹。とりわけ福井県のズワイガニは「越前がに」として全国に知られる。その中でも、毎年皇室に献上されるのは福井・三国港の蟹に限られる。三国の蟹は日本一と称えられる所以である。食通たちを唸らせる豊潤な味を堪能できる蟹の街を巡る。
“冬の味覚の王様”と称される雄のズワイガニの中でも、福井県内で水揚げされたものは「越前がに」ブランドで特別な存在感を放つ。食通として有名な作家・開高健がその美味しさをエッセイで絶賛したことでも知られるが、全国の数多あるカニの中で、皇室に毎年献上される唯一のカニが「三国港に水揚げされた越前がに」であることは意外と知られていない。
三国港でカニを水揚げできる漁船は全10隻。「天越丸」は前日午前1時に日本海へ出港、1泊2日の漁から戻った。夕方のセリに向け、船上で越前がにのタグ付けやキズの有無のチェックなどをする。三国港の市場を運営する福井県漁連三国支所の村田直也所長が説明する。
「皇室に献上される越前がには三国港水揚げの1.1キロ以上の高品質のものと決められており、三国町の鮮魚店4社が持ち回りで調理し、その夜に福井県職員が車で運びます。同等の重さと品質の越前がには皇室献上級としてセリにかけられます」
三国港では午後6時からセリが始まる。前日午前0時~1時頃に出港した底引き網漁船は夕方までに帰港し、水揚げしたばかりの生きたカニをセリにかける。
三国港のセリに参加できるのは三国町の仲買業者25社のみ。越前がには木のセリ台の上に1箱ずつ登場し、競り人の威勢のよい掛け声が響く中、次々と競り落とされていく。三国港のセリに参加できる仲買業者であり、皇室への献上ガニの調理を持ち回りで担う「やまに水産」は東尋坊商店街にも店を構えている。その土産コーナーや通販で「皇室献上級越前がに」も購入できる。