正月料理の定番おせち。黒豆、数の子など縁起がよい料理を重箱に詰めることで「福が重なる」「めでたさが重なる」という願いが込められている。しかし、コロナ禍により複数人で重箱をつつく行為への懸念が生じたことで、「今年はおせちや鍋は止めておこう」という家庭も少なくない。
だが、「国の分析では、『何を食べたか』ではなく、大声で話すなど、食事の席での『行動』がクラスターの発生要因になるとしている。重箱に詰めたおせちも、取り箸で小皿に取り分けること」(長野保健医療大学の塚田ゆみ子助教)で安心して口にできる。
おせちに限らず、家族が自宅で食べる正月料理に過度な警戒は不要だ。
「もし家族のなかに無症状の感染者がいて、飛沫が家族の手や食器に付着したとしても食前・食後の手洗い、うがいで感染リスクは抑えられます。口腔内に新型コロナウイルスが入った場合でもウイルスが増殖し、細胞に侵入する前に、うがいや口ゆすぎで洗い流すことができます」(千葉科学大学危機管理学部の黒木尚長教授)
逆にコロナ対策の弊害で、食事中の“思わぬ事故”が急増する可能性も指摘されている。神奈川歯科大学副学長・大学院歯学研究科長の槻木恵一氏が語る。
「毎年1月には高齢者が餅を喉に詰まらせる事故が頻発し、昨年は約4000件も起きました。加齢とともに唾液の分泌量が減ることや、噛む力が衰えることが原因ですが、コロナ対策でマスクを常にしていると口呼吸になりがちで、さらに唾液量が減って餅を詰まらせやすくなる可能性があります。
対策としては普段から口を意識して閉じたり、唾液腺マッサージを行なうこと。餅を食べる場合も、よく噛んでから飲み込めば、唾液とよく混ぜ合わされるため餅の粘着性も弱まりますので、リスクを減らせると考えられます」
今年こそ要注意だ。
※週刊ポスト2020年12月25日号