現役最多のGI38勝(中央、地方、海外)を誇る角居勝彦調教師は、家業である天理教の仕事に就くため2021年2月で引退、角居厩舎は解散となる。調教師生活20年、厩務員として栗東トレセンに来てから34年、北海道のグランド牧場で初めて馬に触れてから40年。角居師は自身のホースマン人生の集大成として『さらば愛しき競馬』を上梓した。角居師によるカウントダウンコラム(全13回)、今回は若駒の調教とレース選択について語る。
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角居厩舎はクラシックディスタンス、牡馬でいえば2000mの皐月賞、2400mのダービーを目指す馬を多く預からせていただきました。
朝日杯フューチュリティステークス(FS)は、2013年まで中山競馬場で行なわれていましたが、角居厩舎からの出走は2010年のリベルタス1頭だけ。ディープインパクトの初年度産駒。12月初めの500万(現1勝クラス)特別で2勝目をあげたので、胸を張ってGIレースに挑みました。
結果は3着。この時勝ったのは翌年NHKマイルカップを勝つことになるグランプリボス。サクラバクシンオー産駒で古馬になってからも安田記念やマイルCSで好走しました。2着のリアルインパクトも3歳で安田記念を勝つなど、トップクラスのマイラー。4着のサダムパテックもマイルCSを勝っている。
わがリベルタスの目標はクラシック。この次のオープン特別、2000mの若駒Sこそ勝ちましたが、クラシック戦線では結果が出ず、しばらく低迷しました。古馬になってからは2200mの準オープンを勝つなど、むしろ長い距離で活躍してくれました。つまりマイラーではなかったのです。
2015年には2000mの新馬戦を勝ったばかりのリオンディーズで(阪神競馬場での)朝日杯FSを勝っていますが、その後微妙な掛かり癖が顔を出すようになり、クラシックでは結果が出ませんでした。すべてが「マイルを使ったから」とは言い切れませんが、やはり将来マイラーとして大成しそうな馬を出走させたいところです。
2歳時はまだ体がしっかりしていないので、1600mのレースでも押していかないと前へ進んでいきません。そうすると馬は前へ行くものだと思うようになり、ハミを噛んで出て行ってしまう。それで掛かり癖がついてしまうことも多いのです。
調教ではハミを操作して、我慢することを教え込んでいきます。他に馬がいると競り合おうとしてしまう馬の場合は、単走で落ち着かせて走らせます。ただし、レースに行くと、こういった調教は役に立ちません。リラックスさせるためならいいのですが、他の馬がいるストレスにも慣れさせなければいけない。我慢させることは、技術に長けた調教助手でなければできないのです。