コロナ禍で世界中が揺れた2020年、野球界の偉大なる名選手が亡くなった。野村克也氏が2月11日に逝去(享年84)。野村氏は南海、ロッテ、西武で45歳までプレーし、歴代2位の657本塁打を記録。南海、ヤクルト、阪神、楽天の監督を計24年間務め、リーグ優勝5回、日本一3回という輝かしい実績を残した。
元ヤクルトの川崎憲次郎氏が、野村氏との思い出を語る。
* * *
1993年の西武との日本シリーズ、3勝3敗で迎えた第7戦に先発を任されました。試合前、緊張していると、野村監督が「おまえのピッチングをしろ。勝つか負けるかは時の運だから」と声を掛けてくれました。この言葉で落ち着き、7回2失点で勝利投手に。シリーズMVPを獲得することができました。
1995年、「シュートを覚えろ」と言われましたが、直球勝負の欲を捨てきれない自分がいました。ただ、それまで空振りを取れていたストレートが打たれるようになり、成績が低迷。1997年にシュートを投げ始めるようになり、翌年精度が上がって面白いように右打者の打球が詰まるようになりました。たった10cm程度曲がるだけで、最多勝と沢村賞を獲ることができました。
変化すれば、奇跡を起こせると教えてくれました。今も『野村ノート』の“初めてのことを何かやってみる”“変化することへの恐れを捨てよ”という言葉を胸に刻んでいます。
※週刊ポスト2020年12月25日号