例年、大勢の参拝客で賑わう初詣だが、コロナ禍の2021年のお正月は「無病息災をお願いしたいけど、とくに三が日は人が密集するから──」(60代男性)という心配がつきまとう。ナピタスクリニック新宿の濱木珠恵院長はいう。
「初詣は屋外での行動が多いので“密閉”は避けられそうですが、参拝客で混み合っていれば必然的に感染リスクは“3密”並みに高くなる。感染対策の観点からいえば、地元の小さな神社やお寺にお参りにいくのがよいでしょう」
コロナ対策を取っている寺社は多く、神社本庁も「神社における感染症対策ガイドライン」を策定し、臨時の賽銭箱を複数設置して参拝客が一か所に集まらないようにしたり、手水舎の柄杓(ひしゃく)や鈴緒の使用禁止などを呼びかけたりしている。
参道沿いの露店の出店を取りやめる動きも多く、境内の混雑ぶりがわかるようにカメラを設置し、インターネット上から確認できるようにしている寺社もある。授与所でも、お守りやお札の支払いに電子マネーなどキャッシュレス決済の導入が進み、なかには電話やインターネット上で申し込みを受け、郵送で対応する寺社もある。
一方で、毎年お参りしている人気の寺社にこだわりたい人もいることだろう。その場合、「三が日を避けた初詣」も有効だ。雑誌『宗教問題』編集長・小川寛大氏が語る。
「学問の神様として知られる福岡県の太宰府天満宮は桜も咲き始める3月末までを“初参り”と定めるなど、各地の寺社が初詣の開始時期を先延ばし、あるいは前倒しで対応しています。
実は三が日の初詣の歴史は100年ほどしかありません。初詣は明治時代の鉄道網の発達や都市化のなかで生まれた“近代行事”。それまでは地域ごとの風習に従ったり、宗派ごとの縁日に合わせて参詣するのが一般的でした。無理にでも年末年始に初詣するのではなく、柔軟に対応していきましょう」
大切なのは時期ではなく、お参りしたいという気持ちだ。
※週刊ポスト2020年12月25日号