家にいる時間も長かった2020年。あの人はどんな本を読んだのか? 読書家の著名人4人に「私が選ぶ3冊」を選んでもらった。
●辻村深月さん(小説家)
『Another 2001』(綾辻行人/KADOKAWA)
クラスに〈死者〉がまぎれこむ〈現象〉を通じて中学生たちが〈災厄〉に見舞われるホラー、ミステリー、そして青春小説の傑作。前作から3年後を描く今回は前作と構成の角度を変え、これがまた圧巻のおもしろさ。今から読める人、いいなぁ……。
『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』(辻真先/東京創元社)
『逆ソクラテス』(伊坂幸太郎/集英社)
●奥田英朗さん(小説家)
『沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修 評伝』(細田昌志/新潮社)
私の少年時代のスポーツヒーローは、ONでも大鵬でもなくキックボクシングの沢村忠だった。その沢村を世に送り出し、日本に一大ブームを巻き起こした伝説のプロモーターの評伝は、昭和のパーティーピープル総登場の面白さ。この労作に脱帽する。
『消えたお妃候補たちはいま』(小田桐誠/ベスト新書)
『ヨーコ・オノ・レノン全史』(和久井光司/河出書房新社)
●青山ゆみこさん(エディター・ライター)
『おやときどきこども』(鳥羽和久/ナナロク社)
私塾の先生で精神分析も学んできた著者。「子ども」と「大人」はうまく向き合えない矛盾を抱えた関係であることが、現場のエピソードから理論的に紐解かれていきます。すべての大人は、親は「自分も子どもも責めないで」。そのメッセージに落涙。
『兄の終い』(村井理子/CCCメディアハウス)
『海をあげる』(上間陽子/筑摩書房)
●朝倉かすみ(小説家)
『あの日、君は何をした』(まさきとしか/小学館文庫)
「はあって言うゲーム」は、様々な場面で漏れ出る、例えば「はぁ」という言葉を声と表情だけで表現するゲームなのだが、それになぞらえると、これは「うわあって言う本」。人物、心理、展開などなど、読みながら、実にいろんな「うわぁ」が出る。
『ピエタとトランジ〈完全版〉』(藤野可織/講談社)
『去年の雪』(江國香織/KADOKAWA)
※女性セブン2021年1月7・14日号