師走の書き入れ時、スーパーをはじめ小売店にとって悩みの種は万引き被害だ。今年はレジ袋の有料化に伴い「エコバッグ万引き」の急増が問題となっている。その防止策として最近ではAIが活躍しているという。ジャーナリストの山田稔氏が、AI搭載防犯カメラシステムを開発、商品化した都内のIT企業を取材した。
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万引きというと軽微な犯罪のイメージだが、年間の被害額は4615億円超(全国万引犯罪防止機構の調査/2010年)というから、大企業数社の年間売上高に相当する規模だ。発生件数もずば抜けて多い。犯罪白書によると令和元年1年間の万引きの認知件数は9万3812件で、窃盗全体の17.6%を占めている。
深刻なのは万引き検挙者の高齢化だ。令和元年の刑法犯の検挙者数は19万2607人。このうち万引きは5万5337人(28.7%)。一方、検挙者に占める65歳以上の高齢者は4万2463人で、全体の約22%を占めている。
男性は2万8877人で、そのうち万引き検挙者は41.5%。女性は1万3586人で、そのうち万引き検挙者は75.6%と圧倒的多数となっている。それだけ高齢者による万引き犯罪が多いということだ。
今年も10月までに4万2599人(全世代)が万引きで検挙されている。コロナ禍による巣ごもり期間が長かったり、店舗の営業時間短縮などもあり、前年に比べ6.3%の減少となっているが、認知件数は7万件を超え、依然として高い水準だ。
しかも、今年はスーパーなどでのレジ袋有料化に伴い、エコバッグ万引きが急増した。カートに開いたままのエコバッグをぶら下げて、人目のないスペースで一部の商品を買い物かごからエコバッグに移してレジを通過してしまうといった手口だ。このためスーパーでは「マイバッグは折りたたんで店内にお持ち込みください」など独自のルールを作って対応しているが、強制はできず対応に苦慮しているようだ。
今夏、エコバッグに切り身の鮭やハムなどをエコバッグに忍ばせて、レジでかごの商品の精算を済ませた70代の女性が、店外に出たところで保安員に現行犯逮捕された。年金暮らしの女性は「将来の生活に不安があり、お金を節約したかった」と話したという。コロナ禍による生活苦が深刻化していく中で、こうした犯行が増加する恐れがある。