昨日の主は今日の敵――総選挙の年を迎える前に、Go To中止を巡る失政などで菅義偉・首相には強い逆風が吹いているが、最大の敵は自民党の「内部」にいるようだ。総理の座を“禅譲”したはずの安倍晋三・前首相との間に緊張が走り、対立は統一会派の議員を含め399人いる自民党全体に広がっている――。
菅首相にとってGo Toキャンペーンの一時停止は政権の生命線に関わる重大な方針転換だ。
コロナの感染拡大の中、菅氏はGo Toキャンペーンを強力に推進することで全国旅行業協会会長を務める「観光業界のドン」二階俊博・幹事長と政策的に強く結びつき、首相に押し上げてもらった。
新型コロナ対策分科会の尾身茂・会長が何度Go To中止を求めても、首相が「感染拡大の原因だというエビデンスがない」と否定してきたのは、最大の後ろ盾である二階氏をつなぎ止めるために必要だったからだ。
しかし、首相が独断で一時停止を決めたため、関係にひびが入った。
「二階さんが全国一斉の停止を聞いたのは発表直前。観光業界へ根回しの時間もなく、救済策も固まっていなかった。補正予算でGo Toの予算を増やし、業界に『全面停止はない』と説明していたから完全に面子を潰された。二階さんが一番ガッカリしているのは、菅さんが支持率低下に怖じ気づいて、観光業界を見捨てたことだ」(二階派幹部)
菅首相は停止発表の日の夜に二階氏らと会食し懐柔を図ったが、関係修復は容易ではなさそうだ。
※週刊ポスト2021年1月1・8日号