ジャニーズ事務所の中ではベテランの1人となった東山紀之(54才)。役者として存在感は増す一方だ。特に、年末年始は映画、舞台、時代劇とさまざまな作品に起用されている。東山の魅力についてコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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波乱に満ちた2020年もあとわずか。そんな中、気になるのが東山紀之の動きだ。
先日放送された『おしゃれイズム』では、番組最後に1月公開主演映画『おとなの事情 スマホをのぞいたら』の話が出た。三組の夫婦とひとりの独身男が「スマホに届くメールと電話のすべてを全員に公開する」というゲームを始め、大混乱になっていくという毒のあるコメディ。東山は元教師の塾講師で唯一の独身、「最大の秘密」を持つ役。映画での主演は10年ぶりだという。
東山の出番は、それだけではない。東京PARCO劇場での舞台『チョコレートドーナツ』が20日に開幕。東山は、育児放棄された障害を持つ少年をパートナー(谷原章介)と育てるゲイの青年ルディ役で主演している。シンガーを夢見るルディの真っ赤なドレスに長いつけまつ毛のドラァグクイーン姿は、妖艶だがどこか切なく見える。それはこの物語が、偏見や差別が激しかった70年代のアメリカでの実話に着想を得たものだからかもしれない。演出の宮本亜門は「この難役に東山さんが挑戦することに、心から敬意を表します」と記す。
また、2021年元日には主演作BS新春時代劇『大岡越前スペシャル~新春に散る影法師』(NHK BSプレミアム)が放送される。
東山は実在の南町奉行・大岡忠相を2013年から演じているが、今回は自分とうり二つの剣の鬼と向き合うことになる。名奉行と復讐の鬼の二役というのは、娯楽時代劇ならではの設定だが、実はレギュラー出演者が二役でまったく違う人物を演じるのは、2018年に亡くなった名優・加藤剛さんがTBSで30年近く演じてきた『大岡越前』シリーズの伝統ともいえる設定なのである。加藤さんも1971年の『大岡越前』シリーズ第二部で悪人を狙う謎の浪人になっている。
年末年始半月ほどの間に、モテない独身男、ドラァグクイーン、名奉行、それも全部主役って。驚くべき仕事ぶりだが、もっと驚くのはどの仕事でも変な重たさを感じさせないことだ。若き日に『琉球の風』でジャニーズタレント初の大河ドラマ主役となり、松方弘樹、藤田まことら名優から直接教えを受け、舞台では蜷川幸雄演出の『さらば、わが愛 覇王別姫』や『サド侯爵夫人』では女形や女性の役を演じている。『源氏物語』で光源氏を演じた際には、ベテラン女優の山岡久乃に厳しくダメ出しをされ、自宅に来訪されて稽古を受けたという。大先輩が自宅にこんにちは。こりゃ大変なことだが、こうしてみると、東山が継承してきたものの大きさがよくわかる。