特別背任容疑で東京地検特捜部に逮捕されたはずのカルロス・ゴーン日産元会長。保釈中の2019年末にレバノンに逃亡し、年明けすぐに世界に向けて「不当逮捕」だと訴えた。東京地裁ではゴーン氏不在の元、共に逮捕されたグレッグ・ケリー元代表取締役の裁判だけが続いているが、日産のお膝元である横浜地裁では、日産とゴーン氏が真っ向からぶつかり合う裁判が始まっている。
「日産は会社に損害を与えたとして100億円の賠償をゴーン氏に求めている。対するゴーン氏は元特捜検事の郷原信郎氏らを弁護士として訴えの棄却を求め、徹底抗戦する方針です」(司法記者)
郷原氏はゴーン氏の保釈中に交流を重ね、『「深層」カルロス・ゴーンとの対話』(小学館刊)という著書も出すなど、ゴーン氏に寄り添ってきた。郷原氏が語る。
「刑事裁判が開けない今、この民事訴訟が唯一、ゴーン氏が関わる裁判であり、事件の真相解明の場になるでしょう」
最近のゴーン氏の様子は?
「11月末にZoomで会議をしましたが、国連人権理事会でゴーン氏の逮捕、勾留について、『根本的に不当だ』という意見書が出た直後だったので、『いかに日本の検察の逮捕はひどいものかということを、国連が認めてくれた』と、随分と喜んでいました」(同前)
12月14日付のフランス紙・リベラシオンの報道によれば、ゴーン氏夫妻の資産計1300万ユーロ(約16億4000万円)相当を仏税務当局が追徴課税を視野に押収したという。仏当局は夫妻が居住地をオランダに移していたことに対し、「課税逃れのための虚偽申告だった」と判断しているようである。激動の1年だが、この人は何も変わっていないようだ。
※週刊ポスト2021年1月1・8日号