現役時代に輝かしい成績を残し、南海時代には選手兼監督としても活躍した故・野村克也さんは、現役引退から10年後の1990年、ヤクルトスワローズ監督に就任した。万年Bクラスだったヤクルトを3度の日本一へ導いた手腕は、今も高く評価されている。当時その薫陶を受けた宮本慎也氏が、最も印象に残っている野村監督の言葉を振り返った。
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野村監督の言葉で最も印象に残っているのは、入団1年目のユマキャンプのミーティングでの「脇役の一流になれ」という言葉です。
「ドラマは脇役がいるから主役が引き立つ。脇役なしでは成立しない。野球は筋書きのないドラマというが、野球も脇役がいないと成立しない」と。自分がプロで目指すべき方向を示してくれた一言でした。
当時のヤクルトは、野村監督についていけば間違いない、勝てるというムードがあった。だけど、手取り足取り教えるのではなく、ヒントを与えるので自分なりの答えを出せという考え方で、その答えに至った根拠を示せないと怒られた。自分で考えるという習慣が身に付きましたね。僕はプロ野球で19年現役を続けましたが、これは野村監督のお陰で、最大の恩師だと思っています。
一流の脇役になれたかどうかは他人が評価することなのでわかりません。
2019年の11月に取材で一緒になったのが、野村監督と話す最後の機会でした。その時、「早く監督をやれ」と言われましたが、その姿を見せられなかったことが残念です。
【プロフィール】
宮本慎也(みやもと・しんや)/1970年生まれ。野村ヤクルト5年目の1995年に入団し、2年目からショートに定着。現役引退までヤクルトに在籍した。
※週刊ポスト2021年1月1・8日号