未知のウイルスとの闘いに明け暮れた2020年が終わろうとしている。後世において、新型コロナ禍はどのように語り継がれていくだろうか。歴史の画期となるであろう1年だったが、今年も歴史学・人類学上の新たな発見が日本や世界で相次いだ。歴史作家の島崎晋氏が、2020年に明らかになった歴史上の重要な新発見を厳選して紹介する。
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夏期オリンピック東京大会で賑わうはずだった2020年。しかし開催は延期されたうえ、年間を通しての話題も第一に新型コロナウイルス、第二にアメリカの大統領選挙、第三に安倍・菅政権関連となってしまった。全世界的に移動制限がかけられたことから、考古学的な発掘を始めとする現地調査・取材は低調に終わったが、それでも日本史の解明につながる重大な発見がいくつもあった。特に、京都での二つの発見に注目したい。
どの文献にも記載されていない「謎の巨大寺院跡」
京都で発見されたのは、どちらも16世紀に実在した大規模建築物の遺構。一つは文献に一切記録がない謎の寺院で、もう一つは文献上では確認されながら、これまで物証に欠けていた幻の建築物だ。
「謎の寺院」は16世紀中頃、戦国時代後半のものとされる。今年5月1日、『京都新聞』は発掘調査にあたった民間会社の発表をもとに、「戦国時代の大規模寺院か 文献になく、乱世の政情不安を映す」と題する記事を報じた。
それによれば、遺構が発見された場所は京都市上京区にある相国寺の北側の旧境内地。〈建物跡は東西12メートル、南北16メートル以上に及び、南北に長い造りだった。礎石が三つ残り、柱間は3.9メートルと広く、寺院建築の可能性が高い〉という。
当時の大寺院は臨時の軍事拠点として重宝されたため戦火に巻き込まれることも多く、今回発見された礎石建物跡もその一つであったと考えられる。短期間に築造と廃絶を繰り返し、焼け跡も確認されているから、戦略上の要地で、何度も激戦が展開されたところのはずだ。それなのに文献上に一切記録のないというのは、大いなる謎である。