新型コロナウイルスの流行は収まっている中国だが、失業者の増大という社会の不安定化につながる深刻な問題に直面している。北京大学国家発展研究院の姚洋所長は「失業率は約20%、失業者は約1億4000万人にも達している」との調査結果を明らかにした。中国政府は失業率について、公式には6%前後と発表しているが、姚氏によると、農村部の貧困農民の存在を無視しているために、数字が低くなっているという。
さらに姚氏は騰訊(テンセント)財経ニュースのインタビューで、「中国での新型コロナウイルスの流行期間はそれほど長くはなかったが、国内経済への影響は依然として深刻だ。今年第1四半期(1~3月)には多くの中小企業、特にサービス業が倒産を余儀なくされており、中小であるがゆえに、事業を再開するのは極めて難しい状況だ」と指摘した。
中国政府は2020年6月末時点の失業率について、全国平均で5.7%と発表している。しかし、北京大学が同じ時期に全国の6000人以上の労働者をオンラインでインタビューした結果、完全失業者の割合は約15%、アルバイトなどで生計を立てているもののほぼ失業状態の市民の割合は約5%、両者を合わせると約20%になることを明らかにした。中国全体の労働人口は約7億人なので、失業者数は約1億4000万人となる。
国内の農民工(出稼ぎ労働者)の失業問題も深刻だ。第2四半期(4~6月)以降、出稼ぎ労働者の多くは職を求めて都市部に移動し始めたが、新型コロナの影響がまだ残っている都市部では経済は本格的には回復しておらず、すべての農民工が仕事を得るのは難しい状況だという。
また、政府の発表した失業統計のなかには、今年卒業した870万人以上の大学生は含まれていない。卒業生の大半は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大半が職に就いていないとみられる。
さらに深刻なのが農村部の貧困者だ。中国政府の失業統計調査は長年、都市戸籍人口だけをカバーしており、農村人口は除外されてきた。農民らは田畑から作物を収穫して生活しているためだが、その実態は1人1人の農民の耕作地はきわめて小さいため、生活はかつかつだ。