新型コロナウイルス関連の報道一色だった2020年──。今年ほど繁華街や観光地の「人出映像」が流れた年もないだろう。しかし、そうしたテレビの報道姿勢や意図に疑問を投げかけるのは、北海道HTBの人気ローカル番組『水曜どうでしょう』の生みの親、藤村忠寿チーフディレクターだ。
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週末の夜、仕事を終えたサラリーマンや若者たちで賑わう繁華街。天候に恵まれた休日、家族連れやカップルたちの笑顔で溢れる行楽地。テレビから流れるそんな映像は、見る人々の心を弾ませてくれるものでした。
それが今や「そんなことをしてていいのか」「緩んでる」「自分は我慢しているのに」と多くの人が思ってしまう。「好意」の目で見ていたものが「悪意」の眼差しへと変化する。今年、世の中が一変してしまったことを一番感じる事象でした。
もちろん、感染症対策のために外出を控えなければならなくなったという社会状況の変化を理解しているうえで、それでも、人々の心のあまりに急激すぎる変わりように、映像に携わる者として妙な胸騒ぎを感じざるを得ないのです。つまりそこには「映像が大きく関与していた」ということです。
同じ映像であっても、それまでは「楽しそうだね」と見ていたのに、ある時から「けしからん」という怒りの感情を見る者に生み出してしまう。受け取る側の印象をここまで急激に変えてしまったのは、映像を送り出す側の意思が強く作用していると考えられます。
夜の繁華街を歩く若者、行楽地にいる家族連れ、そんな人々の映像を映し出し、「こんなにも多くの人が町に出ています」というレポートを入れ、そこに映る人々を指して「緩んでますね」とコメントすれば、映っていた人々の個々の事情などお構いなしに、見る人は一様に「けしからん」と眉をひそめることになる。それは当然の流れです。