北京市郊外の「北京で最も美しい村」といわれた高級住宅街で、騒動が起こっている。600世帯、約1000人以上の住民が退去を求められるも拒否し、集会やデモを開くなどして、周囲を包囲した警官隊と対立。当局側は抵抗する住民の住宅の電気や水を止めるなどしたため、住民側はハンガーストライキに踏み切るなど、事態は長期化の様相をみせている。
この村の一戸を所有する中国政法大学の楊玉聖教授は香港ケーブルテレビ(HCT)に対して「政府は2010年当時、高級住宅地開発として一戸を約100万元(1500万円)で販売した。それを10年後に違法建築として土地収用するのは契約違反だ」などと主張。法廷闘争に持ち込む構えだという。
騒ぎが起きているのは北京市中心部から北に約50kmの住宅地「香堂文化新村」。HCTや、米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」によると、かつて地元政府が払い下げた建物にもかかわらず、当局が突然「違法建築」として、2020年12月に入り約600世帯に「7日以内に退去するよう」通告したという。
昌平区人民法院(地方裁判所)が600戸の撤去を命じたことから、12月10日には1000人近くの警官や業者が10数台のクレーンやトレーラーパワーショベルで村に入り、建物の取り壊しに着手。住民側も決起して、警官隊と衝突が起きるなど、流血の事態も起きている。
その後、村の住民は、14日にハンガーストライキを決行したという。ネット上では、村民が撮影した動画がアップされており、杖をついた80代の共産党員の男性が、村を囲う警官隊に向かって、「老後の生活のために政府が売った家を買った。一生懸命働いてきたのに、今度は家が取り壊されようとしている」と叫ぶ様子が映っている。
この「香堂文化新村」は約10年前、地元の鎮(町村)政府が土地を売り出すと、主に北京市内の富裕層が購入し、別荘や中国の伝統建築様式である「四合院」風の高級住宅などが建ち始めた。北京市政府は「北京で最も美しい村」と称賛するなど、「オリンピック文化村」や観光地として宣伝してきた。それが一転して、地元の鎮政府が違法建築だとして、強制収用に乗り出している。
ネット上では「強制取り壊しは人類の文明に反する。生計を立て、家を建てるには何十年もかかるが、財産が取り壊されるのは一瞬だ」、「政府は不合理な解体協定を強要し、住宅を解体している。これは反人類的で反文明的だ」、「今日(10日)は『国際人権デー』だが、中国当局は公然と人権を侵害しており、国際的な反中勢力を利するための材料を作っている」などとの意見が出されている。