ウイルス性肝炎やアルコール性肝炎、非アルコール性肝炎などで長期に炎症が続くと肝臓は線維化、硬くなり機能が低下して肝硬変を患い、重症化すると命に係わることもある。この肝硬変の根本治療として再生治療の治験が始まった。患者の骨髄から採取した細胞ではなく、他家脂肪組織由来間葉系幹細胞製剤(たかしぼうそしきゆらいかんようけいかんさいぼうせいざい)による治験の第2相試験も始まり、実用化に期待がかかる──。
肝硬変の原因は日本人に多いC型B型のような肝炎ウイルスによるもの以外に、過度の飲酒によるアルコール性や非アルコール性肝炎、薬物など様々だ。多くは慢性肝炎から肝硬変に移行し、炎症が繰り返されるたび線維化が進み、肝臓が硬く小さくなっていく。慢性肝炎の患者は全国で約400万人、肝硬変の患者も30万人以上と推計されている。
肝硬変の初期では明確な自覚症状はないが、進行すると黄疸、腹水や意識変容、脳症などの重篤な症状が現われ、命に係わることもある。また肝硬変から肝不全、肝臓がんに移行するリスクも高い。
新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の寺井崇二教授に話を聞いた。
「これまで肝硬変の根本となる治療はほとんどなく、進行した肝硬変の場合は肝移植でした。肝臓は再生力を有しますが、肝硬変になると肉を紐でガチガチに巻いたハムのようになり、肝臓本来の再生力を発揮できません。しかし、私は20年程前から、肝臓の再生治療の研究に取り組み、線維化が解消すれば肝臓の機能や再生力が戻ることを発見したのです。そこで2003年、線維化を解消するために、患者本人の骨髄から採取した細胞を体内に戻す再生治療を世界で初めて行ないました」