病院での検査の中でも関連するものが多い「がん」だが、必ずしも毎年受けなければならないわけではない。特にコロナで「受診控え」が進んでいる今は、その検査方法や受けるタイミングを見直す絶好の機会ともいえる。
たとえば日本人男性の死亡率トップの肺がんも、適切なかたちで検査を受けたい。医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広氏が指摘する。
「健診でよくある胸部X線検査(レントゲン)は解像度が低く、1~2cmほどの初期の肺がんを見落とすことが多い。しかも心臓や肋骨と重なった部分のがんや、血管の横隔膜の陰などに隠れたがんは見つけられない可能性が高い。
日本医療機能評価機構によれば、肺がんのレントゲンでは、陽性なのに陰性と判断される『偽陰性』が最大50%出たとされます。
肺がんの罹患率は50代から高まるので、50代からはより発見率が高い胸部CT検査を受けるのがよいでしょう。ただし、頻度は3年に1度程度でよいと考えられます」(上医師)
受けるべき検査もある
“高齢者のがん”と言われる前立腺がんは、「検査を受ける意味」から考え直したい。ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師(内科専門医)がいう。
「前立腺がんを見つけるPSA検査は50歳ごろから受け始めて、結果に応じて1~3年に1度検査すれば大丈夫です。また、前立腺がんは進行が遅く、高齢になると体に負担のかかる手術を避けて、経過観察する方法もある。80代以上の人は、PSA検査自体をやめる選択肢もあります」
一方、症状が出にくく“沈黙の臓器”と呼ばれる肝臓は念入りな検査が推奨されている。
「30~40代のうちは腹部エコー検査で肝臓の状態をチェックして、50代になったらより精度の高い腹部CT検査に切り替えることが望ましい。ただし、60代以降は2~3年に1回の頻度が適切でしょう」(東京国際クリニック院長の高橋通医師)
※週刊ポスト2021年1月1・8日号