100年に1度の大変革と言われ、技術革新の荒波にもまれている自動車業界。近年はモデルチェンジのサイクルも早まり、毎年多くのブランドが生産を終了し、市場から姿を消している。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、今年コロナ禍でひっそりと消えたブランドの一部を挙げて、その理由について考察する。
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コロナ禍による影響とあいまって、いま自動車業界では次の世代に向けた事業のメタモルフォーゼのスピードがさらに上がっているように感じられる。そんな中で増えたのが、“無駄なモデル”の整理だ。
クルマ自体が古かったり、市場の特性に合わなかったりするものは、容赦なくバッサバッサと切り捨てられる時代。2020年もいくつものモデルが後継機種もないままに姿を消したり生産終了が発表されたりした。
日本固有サイズの作り分けが非効率的に
「プレミオ/アリオン」(トヨタ自動車)
今年12月、トヨタ自動車は5ナンバーセダンの「プレミオ/アリオン」、サブコンパクトトールワゴンの「ポルテ/スペイド」、そして3列シートの「プリウスα」と、一気に5車種のモデル廃止を発表した。生産終了は2021年3月。
この5モデルに共通するのは、つい7、8年ほど前まではそれなりに人気があり、販売台数もほどほどだったということ。そして、人気が日本市場限定だったということだ。その典型例が5ナンバーセダンのプレミオ/アリオン兄弟と言える。
プレミオの前身はトヨタの伝統的モデルのひとつであった「コロナ(最終型はコロナ・プレミオ)」。アリオンはその兄弟車として1977年に登場した「カリーナ」で、ともに2001年に登場した。
両方とも5ナンバーボディで、プレミオはその時代の「クラウン」の面影をちょっと投影した、クラウンをうらやましいと思うタイプの人たちへ、アリオンのほうは保守的セダンではあるが若干若作りしたいという人たちへという両取り戦法で一定の人気を得てきた。
だが、ここにきてプレミオ/アリオンとも主要顧客が免許返納を考える年齢にさしかかり、販売は完全に停滞。5ナンバーの法人需要や若干残った個人需要は下のクラスの「カローラアクシオ」で十分に満たすことができると判断したのだろう。5ナンバーという日本固有のサイズのモデルをいくつも残しておくのは非効率ゆえ、当然車種整理の対象となった。
トヨタはもともと車種の作り分けについてのノウハウは非情に豊富だ。たとえば「ヤリス」が5ナンバーの日本版と3ナンバーの海外版、さらにプラットフォームの手術なしで3ナンバーの「ヤリスクロス」と、低コストに作り分けている。カローラシリーズもしかりだ。そのトヨタでさえ、少数顧客にサービスで日本専用モデルを多数用意するだけの余力はない時代。モデル廃止は当然の流れと言えるだろう。