◆美醜をめぐる3つの作品
長く女子アナの登竜門とされてきたミスコン(ミスキャンパスコンテスト)を中止する大学が出てきたり、女芸人のブスいじりが敬遠されたりと、人の見た目を画一的な基準で評価する「ルッキズム(=外見至上主義)」が議論される機会が増えている。就職差別など、差別につながるルッキズムは批判されてしかるべきだが、一方で美を求める人はいるし、また、ルッキズムの捉え方には個人差や文化差なども関わってくるから、事は単純ではない。
そんななか、ルッキズムを扱った書籍も増え、ルッキズムや美醜問題を考える契機となっている。
たとえば作家の山崎ナオコーラさんは、容姿差別を考えるエッセイ『ブスの自信の持ち方』(誠文堂新光社)で、差別される側ではなく、社会が変わるべきだと説いた。新著『肉体のジェンダーを笑うな』(集英社)にも、顔認証システムがルッキズムの呪いを解きほぐしていく近未来小説が収められている(「顔が財布」)。
税理士の田村麻美さんは『ブスのマーケティング戦略』(集英社文庫)で、「ブス」である自分を受け入れた上で、幸せな結婚&ビジネスでの成功を掴むための人生戦略を赤裸々に綴った。本サイトのインタビューで田村さんは「ブスだったから私は武器を身に付けた」と語っている。ルッキズムを逆手にとり、手にした武器によって、現在は本業の税理士のほか、執筆や講演など、多方面で活躍中だ。
そしてこの11月に出版され、好調な売れ行きを見せているのが『少女マンガのブサイク女子考』(左右社)である。著者は大学講師でライターのトミヤマユキコさん。マンガ研究者であるトミヤマさんがブサイク女子を主人公とした少女マンガ26作を厳選し、「美人は得でブサイクは損」といった分かりやすい二項対立を乗り越えていく、ブサイク女子の恋愛模様や生き様を紹介・分析した。「本書はマンガ批評の本として書かれているけれど、フィクションの力を借りつつ、美醜について考えるための本にもしたい」と、トミヤマさんは「まえがき」に書いている。