藤原北家の流れをくみ、800年にもわたる公家の伝統文化を継承してきた京の名家・冷泉家が正月に食べる「祝い膳」には、さまざまな験担ぎが込められているという。
「“切る”という行為を忌み嫌うため、雑煮には切らなくて済む丸餅を入れます。また、祝い膳には縁起物として干し鯛のエラにめざしを刺した『にらみ鯛』が並びます。それは先に神仏にお供えする意味を持ち、3日間は食べず4日目に食べるものです」(全国紙記者)
3日間食べずに“にらむだけ”なので「にらみ鯛」。鯛は「めでたい」という意味だけでなく、体の赤色が邪気を払う効果があるとされる。
「冷泉家では大晦日に、はまぐりのお吸い物を食べ、その殻をとっておく。そして元日に小さな梅干しとのし昆布を入れた『大福茶』と呼ばれるお茶を飲み、梅の種をはまぐりの殻に入れるんです。それを紙に巻いて置いておけば、“1年間風邪をひかない”のだとか」(前出・全国紙記者)
では、“日本一の名家”といえる「皇室」には、どんな験担ぎが伝わっているのか──。実は、天皇陛下が元日に召し上がるものは、毎年決まっているという。
「朝食は『御祝先付の御膳』と呼ばれます。菱はなびら餅、小串のぶり焼き、浅々大根(大根の塩漬け)などが並びます」(皇室ジャーナリスト)
「御祝先付」を終えると「晴の御膳」という儀式に移る。新年を迎えたお祝いをするもので、勝栗などの木の実や果実、塩や酢などの調味料、鮎の白干しなどが出されるという。勝栗は生の栗を乾燥させて臼でついたもの。「臼でつく」ことを古語で「かち」ということから名付けられ、「勝ち」に通じる縁起物として祝いの席で食べられてきた。
「一説ではこの御膳が『おせち料理のルーツ』といわれます。ですが、陛下は皿に箸を立てるだけで、実際に召し上がることはありません」(前出・皇室ジャーナリスト)
※女性セブン2021年1月7・14日号