日々の生活の中で、何か“いい結果”が出るようにと、“験担ぎ”をする人も多いだろう。個人的なルーティーンとなっているものもあれば、長い歴史の中で受け継がれてきた由緒ある験担ぎもあるはず。
では、日本古来の神事にルーツを持ち、江戸時代に興行が始まった大相撲ではどのような験担ぎがあるのか?
年末になると相撲部屋では後援会や近隣住民を招いて「餅つき」が行われるのが恒例だ。元大関・琴奨菊の秀ノ山親方(36才)が指導を行う佐渡ケ嶽部屋は、200年以上の歴史を持つ有数の名門部屋。
佐渡ケ嶽部屋では年末、6俵半(390kg)もの餅をつくという。それを客にふるまった後、稽古場用の特大鏡餅を作る。鏡餅には、“来年もけがをせず、力が長もちしますように”と願いが込められているそうだ。
「相撲部屋の正月料理は、鶏肉を使ったちゃんこ鍋。鶏は牛や豚と違い二本足で立つため、“この一年、土俵にしっかり立てるように”という験担ぎになっているそうです」(相撲関係者)
このような験担ぎについて、立川流の落語家で『デキる人はゲンを担ぐ』(神宮館)の著者・立川談慶さんさんが語る。
「験担ぎは、貯金のようなもの。成功する人はいくつもの験担ぎをして、“これだけ験を担いでいるのだから”と自信を持って前向きに過ごしているのだと思います」
験担ぎは、過去によい結果が出た行為を繰り返したり、縁起物にあやかることで物事の成功を願うもの。過去の成功体験という歴史に、将来の成功を託しているのだ。
「行為の繰り返しという意味では、『おはよう』『おやすみ』といった普段行っている挨拶も験担ぎといえるのではないでしょうか。どの験担ぎがよいということではなく、自分が続けられることを生活に取り入れるのが、幸せを招くことの第一歩でしょう」(談慶さん)
※女性セブン2021年1月7・14日号