現役最多のGI38勝(中央、地方、海外)を誇る角居勝彦調教師は、家業である天理教の仕事に就くため2021年2月で引退、角居厩舎は解散となる。調教師生活20年、厩務員として栗東トレセンに来てから34年、北海道のグランド牧場で初めて馬に触れてから40年。角居師は自身のホースマン人生の集大成として『さらば愛しき競馬』を上梓した。角居師によるカウントダウンコラム(全13回)、今回は角居厩舎ラストイヤーとなる2021年について語る。
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あけましておめでとうございます。
引退まであと2か月になりました。設備のリース契約など事務的な部分についてはすでに処理を始めていましたが、競馬に関してはいままでと変わりありませんでした。
新型コロナの流行により、ひとと会うことが制限されてしまったのはショックでした。競馬界を去ることについては心の整理がついていますが、長い間お世話になった方々にご挨拶できないのが残念です。
日々の調教でやることは同じです。早い時期に引退を公表したにもかかわらず預けていただいた馬主さんの信頼にこたえなければなりません。レースに向けては誠心誠意仕上げていきますが、その馬たちの新しい所属先もそろそろ決まり始めます。とくに3歳馬は壊さないように、喜んでもらえる状態でお渡ししたいと考えています。
この世代は8頭を預からせていただいており、3頭が勝ち上がりました。そのうちの1頭アンブレラデートはウオッカのライバルだったダイワスカーレットの娘です。厩舎にはウオッカの娘タニノミッションもいます。2頭でお母さんの思い出話などしたでしょうか(笑)。
年が明けると、競走馬たちはいっせいに歳を取ります。「3歳馬」というと若い勢いを感じますが、「4歳馬」となるともう立派な大人です。3歳時は有力馬ほどクラシック路線を意識していましたが、これからはマイラーかステイヤーか、あるいは芝かダートかといった路線を決めたいところです。明け4歳馬をどういう方向に導いていくのかは、調教師としての大事なミッションです。