イギリスで新型コロナウイルスの変異種がみつかり、続けて南アフリカ由来の変異種が見つかった。2020年春の、欧州由来のウイルスを防ぐ対応が遅れたことへの反省だろうか、日本政府は外国人の新規入国停止を決めた。島国だから鎖国しやすくて便利だと思うかもしれないが、実際には水際であるはずの空港の様子は鎖国とは違っているようだ。俳人で著作家の日野百草氏が、新規入国停止のその日、成田空港における感染症の水際対策の最前線を取材した。
* * *
全世界から日本への新規入国停止が始まった2020年12月28日、京成上野駅。成田空港に向かう京成スカイライナー乗り場に人影はなかった。ちらほらと日本人らしき家族はいるが3組ほどだろうか、あとは外国人が数人といったところ。筆者は10分前から乗車しているが誰もいない。2020年2月以前、25日から春節だった1月に来日した92万4790人の中国人が押し寄せたころは満席だったはずのスカイライナーに、乗客が一人もいない。思えば新型コロナウイルスで死者が続出し、都市封鎖まで敢行された中国から92万人4790人も入れてしまったが(大事な数字なので二度書く)、航空会社も旅行業者も店も観光客も悪くない。入れてしまったのは日本政府である。台湾は1月22日に武漢、そして24日には中国全土の団体旅行の往来を禁止したのに、日本は入れた。
結局、筆者のみを乗せて発車。次の日暮里で2人ばかり乗ってきたので安心したが、正直どこへ連れていかれるのか不安になってしまった。
「私は仕事で福岡です」
話しかけると日本人のビジネスマン。夕方の福岡便に乗るという。
「今日のうちに福岡に入って明日はクライアントに出向きます。そのまま実家へ帰ります」
実家が九州ということでちょうどいいのだろう。
「(車両に人)乗ってませんね、こんなにいないのはゴールデンウィーク以来ですね」
やはり彼も人が乗っていないのを気にしていたか。ゴールデンウィークとは2020年の緊急事態宣言のころだろう。確かにあのときは特急どころか在来線すら閑散としていた。
それにしても京成電鉄、筆者の生まれ故郷の千葉県に本社を置く私鉄だけに心配だ。これでは赤字を垂れ流しているだけだろうに。コロナ禍がこのまま続けば、日本の鉄道網そのものが変わってしまうかもしれない。現に2021年春ダイヤ改正から終電の繰り上げ、初電の繰り下げが実施されるが、さらなる減便と特別列車の間引き、廃止が相次ぐ恐れもある。