日本のシンボルといえる富士山だが、象徴するのは美しさや雄姿だけではない。カメラを向けてシャッターを切ると、その時代時代の社会問題や負の遺産が写り込む。時代が背負う陰が富士山の裾野に押し寄せる光景は、さながら日本の現代社会の縮図といってもよいだろう。
富士山と麓には、大自然の営みと人間の営みが共存してきた。それは古代から山岳信仰や芸術、文化を生み出してきた一方、近代・現代においては経済活動や生活の利便性追求による自然破壊、景観破壊といった問題も生んできた。
過去に数々の自然災害に見舞われてきた富士山ならではのジレンマもある。森林を切り開き、砂防施設を整備せざるを得ない状況も近年急増する集中豪雨被害を象徴している。富士山の裾野に広がる景色は、環境問題、少子高齢化問題、エネルギー問題など現代が抱える様々な課題を日本人一人ひとりに問いかけてくる。
富士山とともにある、諸問題が見える風景をお送りする。
●廃棄物処理場(静岡県富士市)
富士山の裾野に設けられた、富士市内で発生する産業廃棄物と同市が回収する一般廃棄物を埋立処理する最終処分場。同市内の排出事業者と同市による第3セクターとして1997年に設立された富士環境保全公社が運営。
●富士ケ嶺公園(山梨県富士河口湖町)
オウム真理教の「サティアン」と呼ばれた教団施設跡(旧・上九一色村富士ケ嶺地区)に整備された約7000平方メートルの富士ケ嶺公園。信者リンチ殺人で犠牲になった人々を慰霊するために園内に建立された碑は、富士山に向いている。