1月20日にバイデン新大統領が誕生し、アメリカは「トランプ時代」の終焉を迎えるが、その前にもその後にも、国内の分裂と混乱は続きそうだ。
トランプ氏は現地時間の1月4日と1月6日に“決起集会”を予定している。1月4日は、上院2議席の決選投票が行われるジョージア州入りし、共和党候補を応援する予定だが、地元の共和党関係者は、「応援と言いながら、実際には大統領選挙で不正があったという、いつもの主張を展開するだけだろう。ジョージア州は共和党の地盤だが、共和党員である知事や州務長官まで攻撃対象にしている。かえって党の結束が乱れるおそれもある」と眉をひそめている。
ジョージア州のトランプ支持者の一部は決選投票のボイコットを呼びかけており、トランプ氏自身も、すでにケンプ知事やラッフェンスパーガー州務長官が公式に認定した大統領選挙の結果を覆そうとしている。今年になって、州務長官に対して「私を支持する1万8000票を見つけてほしい」と、自ら“選挙不正”を依頼するなど、混乱は収まるどころか悪化している。決選投票は、本来なら2議席とも共和党有利と見られているが、トランプ氏と支持者の動きによっては共和党にとって手痛い番狂わせが起きかねない情勢だ。
ジョージア州では、トランプ氏の個人弁護士を務めるジュリアーニ元ニューヨーク市長が「不正の証拠だ」として持ち出した開票所の監視カメラ映像をめぐり、いまだに陰謀論を信じる支持者がデマを拡散し続けている。この情報は日本でもトランプ支持者の間で広まったが、その顛末について正確に理解している人はほとんどいない。詳細はネットなどでも確認できるので省略するが、これらの映像で「疑惑のアタッシェケース」とされたものは「正規の投票用紙入れ」であり、立会人たちの目の前で開票所に運び込まれたことが判明しているし、「立会人を追い出した後に集計を始めた」という主張は、「共和党の立会人は正規の開票時間が終わったので自ら立ち去ったが、開票責任者が開票作業の続行を指示し、立会人を呼び戻して作業を継続した」という事実が判明している。
この例のように、トランプ支持者たちが「不正だ」と主張したことは、ことごとくデマであることがわかっている。トランプ陣営が全米で起こした数十件の訴訟は、ペンシルベニア州で選挙人登録の手続きに問題があったとされた2件を除き、すべて裁判所で根拠がないとして退けられた。そのペンシルベニアでも、そうした票を除いてもバイデン氏が勝利しているのだから、もはや「不正があった」という主張がデマであることのほうが証明されているのである。