一年を締めくくる大晦日に東京で過去最多となる1337人の感染が確認されるなど、全国的に新型コロナウイルスの蔓延に歯止めがかからない。なかでも東京以上に注目されているのは大阪の現状だ。
立教大学大学院特任教授の金子勝氏は昨年12月18日にツイッターで「死者数が異常に多い」と大阪の惨状を指摘し、和歌山県の仁坂吉伸知事は10日に県の公式サイトに「大阪が危ない。日本も危ない」というメッセージを寄せて、大阪の新型コロナ対策に苦言を呈した。
実際、大阪では新型コロナで命を落とす感染者が急増している。昨年12月1~30日の死者は全国2位の250人で、感染者が圧倒的に多い東京(133人)の2倍近く、1位の北海道(254人)ともほぼ変わらない。
大阪の死者が急増したポイントは「高齢者」だ。もともと大阪には、特別養護老人ホームや訪問介護事業所などの高齢者施設が全国最多の約2万事業所あり、第3波ではそうした施設でクラスターが相次いだ。実際に昨年10月上旬から12月下旬の高齢者施設関連の死者は大阪全体の4分の1を占め、12月の死者250人の9割が70代以上だった。
大阪は昨年12月から重症者の専用病棟である「大阪コロナ重症センター」の運用を開始したが、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは、「施設だけ造ってもあまり意味がない」と指摘する。
「重症者を1か所に集め、そこに医療資源を集中投下して治療するのは世界標準の優れたやり方です。しかし大阪は医師や看護師といった専門家を重症センターに集めることができておらず、効果的な運用ができていません」
新たな年を迎えて、大阪のように深刻な危機が浮かび上がるのはどこか。第3波に見舞われた昨年10月1日から12月30日にかけての都道府県別の「死亡率」(『死亡者数』/『感染者数』)と「重症率」(『重症者数』/『入院治療を必要とする患者数』)を独自に算出すると、死亡率では、岩手、北海道、福島、愛媛、兵庫などが高く、重症率では、和歌山、山形、高知、島根、山梨が高くなっている。
ここから読み取れるのは「地方の危機」である。これまで東京、大阪、札幌、名古屋などの大都市が注目されてきたが、感染が地方に拡大していることがわかる。留意すべきは東京や大阪などの都市部にとってこの冬の感染拡大は「第3波」だが、これまで感染者が少なかった地方にとっては今回が実質的な“第1波”だということだ。