2020年から2021年へとオリンピックが1年延期されたことによって、スランプから復活する猶予ができたアスリートがいる。リオ五輪の競泳・男子400m個人メドレーの金メダリスト、萩野公介(26)がコロナの空白期間で、まさに水を得た魚となった。リオ五輪以降、調子が上がらず、競技中、思ったように身体が動かせなくなる“イップス”という話も持ち上がっていた。
東京五輪の代表は4月の日本選手権で決定するが、昨年12月の日本選手権で萩野は、メドレー2種目で優勝している。バルセロナ五輪金メダリストの岩崎恭子氏が話す。
「日本選手権の前にも国際大会に参戦し、かつて鎬を削った選手たちから『おかえり』と言われたようです(笑)。気持ちの面で前向きになったことが大きい。本人は『まだ世界と戦うことはできない』と話していますが、予定通りに東京五輪が開催されていたら、とても世界と戦えるレベルにはなかったと思います」
2019年2月に白血病を発症し、闘病生活を経て2024年パリ大会を目指すと公言して競技復帰した池江璃花子(20)。東京五輪が延期になったことで「可能性があるのならチャレンジしたい」と周囲に漏らしているという。
「2か月ほど前に話す機会がありました。報道で伝わってきていた以上に入院中は大変な思いをされたようです。もともとポジティブな彼女ですが、闘病によってさらに強くなった印象を受けました。ただ、個人種目で東京大会に出場することは現実的ではない。公言通りパリ大会を目指してゆっくりじっくり進んでほしいですね」(岩崎氏)
自由形の選手である池江が、リレーメンバーに入る奇跡が起きれば、コロナに翻弄された東京での五輪に明るい光を照らすことになるだろう。
窮地に立たされるのは、コロナの最中に不倫スキャンダルを起こし、所属先を始めスポンサーを失い、活動停止処分に追い込まれた瀬戸大也(26)。すでに代表には内定しているが、まさに地獄を見た瀬戸にとって、五輪は名誉挽回の舞台となるか。
レポート/柳川悠二(ノンフィクションライター)と週刊ポスト取材班
※週刊ポスト2021年1月15・22日号