新型コロナウイルス対策をめぐり常に議論なるのが「経済優先」か「封じ込み優先」かだ。埼玉学園大学経済経営学部教授の相澤幸悦氏に見解を聞いた。
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政府の新型コロナ対応は、「感染を抑えながら、経済を回す」というものでした。それができれば理想ですが、コロナ対策と経済活動促進は、現実として両立しないことは普通に考えればわかるでしょう。
だとすれば、今はまず感染拡大の封じ込めに注力し、抑え込むまで徹底的に自粛を行なうほうが妥当だと思います。
もともと政府は、昨年の9月までにコロナが収まることを想定していたはずです。支援金や協力金、補助制度で持ちこたえ、9月に大規模な経済対策を講じて一気に景気をV字回復させるという胸算用だった。
が、現実にはそうはならなかった。それ以降、政府の腰が定まっていないように見えます。
政府が今やるべきことは、ロックダウンは無理だとしても、でき得る限りの外出制限です。4月の緊急事態宣言では、どうしても夜の飲食店の営業自粛が徹底できなかった。自粛してもらうにはやはりお金を出してあげねばならない。ここにこそ逐次投入ではなく、本格投入する。それによって新型コロナ感染を抑え込む。抑え込んだ時点で経済対策を講じる。これが誰の目にもわかりやすいV字回復戦略だと思います。
自粛に関しては、ネガティブな印象しかありませんが、意外にそうではないかもしれない。これまでの歴史を振り返ると、危機、窮地の中で新たなイノベーションが生まれ、その後の経済に寄与してきた。コロナ自粛の間に、「ポストコロナ経済」のヒントが現われるかもしれません。
※週刊ポスト2021年1月15・22日号