新型コロナウイルスの感染者が出た場合、保健所の指導等に従って対応することになるが、職場においてはどの程度まで情報を共有すべきかについて難しい判断を迫られる。
社会保険労務士の桐生英美氏は職場で感染者が出た場合、取引先にも「報告する」ほうがベターであると説明する。
「感染者が出た場合、大企業はホームページでアナウンスメントを出すことが多いですが、対面の接触がなかったとしても、基本的には取引先には個別で連絡を入れて伝えるべきだと思います。伝えないで済ませていると、ライバル社から取引先にリークされたり、何かの拍子に発覚した場合に怪しまれたり、本当に濃厚接触者はいないのかと不安がられるかもしれません。
もっとも、個人情報保護の観点から言えば、個人や部署を特定せずに担当部局から感染者が出たことと自宅待機などの処置を伝えるのがいいかもしれません。感染した人の不利益にはならないようにすべきです」
対して、人事ジャーナリストの溝上憲文氏は、報告は「必要なし」と考える。
「感染者が出たとして、会社から取引先にわざわざ個人を特定しての通知などする必要はないし、個人としてもあえて言う必要はないと考えています。今では企業で飲み会禁止などのガイドラインを設けており、それでも家庭内感染などによって感染してしまうケースは防げない。
どんな事情であれ、感染したことを取引先に告げると、『そういえば酒の好きな人だったな』、『飲み歩いていたのか』など、印象を下げかねません。複数の感染者が発生するクラスターで保健所から公表を指導されるような形でない限り、伝える必要はないと思います」
※週刊ポスト2020年1月15・22日号