年が明けても長引くコロナ禍によって激変した国民の働き方や暮らしぶり。特に不動産市場は都心回帰の流れがストップし、昨年は郊外の一戸建てやリモートワーク用の広いマンションが売れるなど、完全に風向きが変わりつつある。果たして「アフターコロナ」の不動産はどうなっているのか──。近著に『ようこそ、2050年の東京へ』(イースト新書)がある住宅ジャーナリストの榊淳司氏が予測する。
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アメリカやイギリスではワクチンの接種が始まっている。日本でも2021年の春ごろには多くの人への接種が可能になるという。報道されている通り、その有効性が90%以上あるならば喜ばしい限りではないか。理論的には、ワクチンが行き渡ればコロナの流行も収まる。
約100年前に世界的に流行し、何千万人もの命を奪ったと言われるスペイン風邪は約2年で消えたという。特にワクチンが開発されて世界中に行き渡ったわけではない。人々の自然な治癒力しか頼れなかった時代だ。多くの人が抵抗力を備えたのだろう。
コロナ禍はいずれ終わる。それが1年後なのか、2年後かは分からない。しかし、いつかは確実に終わる。
では、コロナを心配する必要がなくなった時、われわれは以前の生活に戻れるのか? 多分、それは難しいだろう。コロナはあまりにも多くの変化をわれわれの世界にもたらした。その中のいくらかは元に戻るかもしれない。しかし、戻らないものも多いだろう。
渋谷のオフィスも「借り手優位」に
例えば、働き方の常識を変えたテレワーク。ネット系の大手企業などは、コロナ後もテレワークを常態化すると表明している。テレワークによって業務に支障をきたさないのであれば、それは企業側と働き手双方にウィンウィンの変化となる。
私が眺めている限り、合理的で優秀でスマートさを尊ぶ経営者と社員がいるエクセレントな企業ほど、テレワークに向いている。そういった企業はむしろ、テレワークの導入によって、それ以前よりも業績を向上させている。
エクセレントな企業の多くは、都心にオフィスを構えていた。例えば、渋谷などはIT系の新興企業が好んでオフィスを借りている街だ。だからコロナ以前は賃料が上昇し続けていた。
その渋谷エリアのオフィス賃料は今、ジワリと下落している。反対に空室率は上昇。この変化の潮流はコロナ後も変わらず続きそうだ。つまり、賃貸オフィス市場は当面需給関係が緩んで借り手優位になる。貸し手市場であった渋谷エリアでも、その傾向は変わらないだろう。