高齢の親が認知症になった時、在宅でケアをするか施設に入れるか、その判断は難しい。タレントのつちやかおりさんは悩んだ末に介護施設に入居させた。つちやさんが自身の体験を語る。
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母が認知症と診断されたのは2010年、78歳でした。当時はまだ“まだら”の状態で、しっかりしている時もありましたが、2013年に父が亡くなると症状は進行して、徘徊で警察のお世話になることも。
同居していた兄も仕事があるし、私も離れた場所に住んでいたので、母が一人の時間に徘徊や転倒で命を落とすんじゃないかと気が気じゃなかった。在宅介護を続けることも考えましたが、仕事も含めて、家族が何かを犠牲にしなければならない。悩んだ末に、2015年に介護施設へ入居を決めました。
当初は母を捨てたようで罪悪感に苛まれましたが、今は施設を選んで本当に良かったと思っています。食事は一日3食用意されて、転倒や怪我をしてしまった時も手厚く看病してくださる。
やはりプロの方々が傍にいてくださるのは安心できます。いまは新型コロナの影響で会えていなくて寂しいですが、施設のスタッフが写真や動画を送ってくださるので、それを見るのが楽しみです。
母は施設に入って笑顔が増え、穏やかな日常を過ごしています。何よりも、母を施設に預けたことで、家族みんなが安心して生活できるようになった。もし私が同居して在宅介護を続けていたら、イライラして母を叱責してしまったかもしれないし、精神的にも肉体的にも参ってしまったかもしれません。
施設に入れるのは決して親を見捨てることではなくて、みんなの負担を軽減して、母と家族全員が笑顔になるための選択だったと今では思えます。
※週刊ポスト2021年1月15・22日号