アメリカではバイデン新政権が間もなく誕生する。トランプ政権の「対中強硬路線」がどう変化するのか注目が集まっている。そしてそれは、日本にどのような影響を及ぼすのか。まず、法政大学大学院教授の真壁昭夫氏はこう見る。
「バイデン政権の外交政策を担う国務長官に、アントニー・ブリンケン氏が起用されることは重要です。オバマ政権時の国務副長官だった同氏は、中国と北朝鮮に対し厳しい姿勢を持つことで知られる。国際協調による対中包囲網形成を目指すブリンケン氏の起用は、対中圧力を強化したいバイデン氏の考えが込められているとみていい。
親中派といわれるバイデン氏ですが、トランプ大統領と違って、実務担当者と協議してボトムアップ型の政策運営を重視するタイプです。対中強硬派の外交トップが起用され、中国を取り巻く環境が厳しさを増すのは間違いなく、結果的にそれは日本にとって強い追い風となります」
一方、外交評論家の加瀬英明氏はこう分析する。
「米新政権の閣僚人事を見ると、同じ民主党のオバマ政権でも要職に就いていた顔ぶれが非常に多い。
このことから、バイデン政権はオバマ政権の政策を継承する可能性が高いと思われます。日本の立場から見たオバマ政権の最大の失策は、米中で共同覇権体制を組もうとするなど中国への対応が非常に甘かったことです。
一方、トランプ大統領は対立関係を鮮明にし、日本、豪州、インドなどと中国包囲網の確立を目指した。バイデン氏が対中強硬策を継承すれば日本にはプラスだが、親中派と目されるバイデン氏にそれは期待できそうにありません。バイデン政権は日本にとって、逆風となる公算が大なのです」
※週刊ポスト2021年1月15・22日号