大正7(1918)年に富山の貧しい漁村で起きた「米騒動」。高騰するコメの価格にがまんの限界を超えたおかか=母たちが「負けんまい!」と立ち上がり、井戸端から世の中を変えた、日本の女性が初めて起こした市民運動ともいわれている。
公開中の映画『大コメ騒動』はその史実を基に、約100年前の名もなき主婦たちのパワフルな奮闘ぶりを生き生きと描き出す。主要人物として農村から漁村へ嫁いだおかかを井上真央、おかかたちを束ねるリーダーのおばばをインパクト大のビジュアルで室井滋が熱演。また、コメの価格に揺れる街頭にふらりふらりと現れては、「あきらめなされよ あきらめなされ〜」などとふしぎな調べの歌を飄々と口ずさむ富山日報の記者を立川志の輔が演じている。
志の輔が口ずさむのは明治大正期に流行した添田唖蝉坊(そえだあぜんぼう)の歌。政治や社会を風刺し、庶民のうさを晴らす痛快な歌で人気だったといい、朝日新聞の天声人語(1月9日)でも作品の背景となった時代を鮮やかに切り取り、『大コメ騒動』と共にいまの世相と深く響き合う歌だと紹介された。富山の米騒動はスペイン風邪が猛威を振るった大正時代の出来事だが、令和時代のいまはコロナ禍に喘いでいる。
9日の公開御礼イベントに登壇した井上は、「大変なときに庶民の『頑張ろう!』とする力が社会を大きく変えていったことになるのかな」と思ったと明かし、こんな時代だからこそ、作品から庶民の底力を感じてほしい(映画公式イベント配信映像より)と語った。
「試練に続く試練ですが、映画は103年前の米騒動に打ち勝っていくという物語。ひょっとしたら現代のかたにも参考になるのでは」
と、メッセージを寄せたのは室井。映画のクライマックスとなるシーンで、おかかたちの大群が米俵めがけて突撃する光景は迫力満点。大正のおかかの熱量と行動力に胸がスカッとすると同時に“令和のおかかも負けていられない!”と胸が熱くなり、元気がでること請け合いです。
映画『大コメ騒動』
TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中
配給:ラビットハウス、エレファントハウス
ノベライズ版が小学館より発売中
※女性セブン2021年1月28日号