「ですが…」「だよね…」など、文章の末尾に“てんてんてん”をつけるクセのある人はいないだろうか。この「…」は、「三点リーダー」といって、「、」や「。」などの句読点と違い、厳格な使用ルールはない。しかし、自由度が高い記号だからこそ、リモートワーク中の人々を惑わせているという…。
「問題なければ、それでも構いませんが…」
「できれば、そうしてほしいんですけど…」
1年近く経つコロナ禍で、リモートワークもすっかり定着した。都内の企業に勤める大山綾子さん(仮名・41才)は、自宅作業中に気づいた違和感についてこう話す。
「最初は、慣れないビデオ通話での会議が苦痛でした。電話がかかってくることも増えて、正直、面倒だなと思っていました。でも、いちばん厄介なのはLINEやメールだと気づいたんです。『電話よりLINEの方が仕事効率がいい』という実業家もいますが、うちの会社は逆です」
大山さんは、上司から連日送られてくる冒頭のようなLINEにうんざりしているという。
「毎回、言いたいことがイマイチわからない。そのため、『では、こういたしましょうか?』と、相手の真意を探るような返信をいちいち送らなければならない。『はっきりしろ!』と言いたいですが、上司なのでがまんしています」
リモートワークにより、LINEやメールといった文章でのやり取りが増えたことで、大山さんの上司のように語尾を「…」でボカして曖昧な言い回しをする人が増えているという。こういった人たちは「三点リーダー症候群」と呼ばれ、相手を困らせ、やり取りに手間がかかるのが共通点だ。『大人力検定』(文春文庫PLUS)などの著書を持つコラムニストの石原壮一郎さんは、「三点リーダー症候群」の“ズルさ”を指摘する。
「三点リーダーというのは、本来は『ほかにも、もっとたくさんありますよ』といった余韻を表現する記号です。お悔やみの言葉など、言葉に詰まっているニュアンスを表すことや、言いづらいことを濁すという機能もあります。表現を広げてくれる便利な記号ですが、便利さを逆手に取って、『相手に察してほしい』とか『相手の提案を待つ』といった、ズルい魂胆で使う人もいるのでしょう」