「開放感があって伸び伸び飲める梅田一の大箱やね。研究室の学生たちを連れてたまに来るんやけど、社会勉強になるんちゃうかな」(40代、教員)
「サラリーマンばかりで新鮮。立ち飲みで足腰も鍛えられるし、広い空間で誰にも気ぃ使わず、こういう店って一番酒を楽しめる環境だと思います」(20代、大学生)
70坪という圧倒的な広さを誇る『ビンゴヤ』は、阪急の大阪梅田駅北側、大衆的な店が並ぶ芝田商店街に建つ老舗酒屋だ。
店先には酒ケースや配達用の自転車も置かれ、酒屋の倉庫も兼ねた備後屋ビルの1階に130人は収容できるという巨大な角打ち空間が広がる。
「店の者には、いらっしゃいませぇ!って腹の底から声出してな、言うてます。お客さんに元気になって帰ってもらいたいやないですか」と語る3代目店主の渡邊剛さん(67歳)の願い通り、
「こういう店はサラリーマンたちの最後の砦や思う。おっさんは、バルにはなかなか入られへんからな。いつ来ても明るく活気がある店やね。ここへ来ると明日も頑張ろうと思えて、士気が上がるね」(40代、飲食業)
「母と2人で初めて来たけど、ザ・昭和な雰囲気がめっちゃ好き。テンション上がります」(20代、福祉関係)
と店内は元気が満ち溢れている。
「店名の由来は、先々代が備後国(広島県三原市)の出身やったから。親父の代にここ(芝田商店街)へ移ってきました。この辺りは大阪でも昔ながらの店が残っとる、どこかほっとする場所やと思うんです。
勤め帰りのお客さんがほとんどやから、仕事終わってここへ寄って、家に帰るまでに小一時間過ごして、気持ちを上げてもらいたいんですわ。酒は丸1日かけて丁寧に氷でキンキンに冷やしてます。家で飲むのとは、絶対違う、店ならではのよさを提供したいと思ってます」(渡邊さん)
そんな店主こだわりの空間には、正方形の角打ち台が整然と並び1から28番まで番号が貼ってある。
「手前味噌やけど、この角打ち台は特注でこしらえたんです。天板の下には、ビジネスバッグが縦に入るように設計しました。最初、大工さんに作ってもったんだけど、気に入らなくて家具屋さんにやり直してもらった力作です」(渡邊さん)