日韓関係は、新年早々に一層冷え込んだ。韓国人の元慰安婦らが損害賠償を求めて日本政府を訴えた裁判で、ソウル中央地裁は1月8日、日本政府に対し、慰安婦一人当たり1億ウォン(950万円)、総額12億ウォン(1億1400万円)の賠償を命じたのだ。
国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則を無視する異例の判決で、茂木敏充外相は翌9日の会見で、「国際法上も2国間関係上も到底考えられない異常な事態。あらゆる選択肢を視野に入れて毅然と対応していく」と語気を強めた。元駐韓大使の武藤正敏氏が語る。
「韓国メディアが『我が国の司法には“国民情緒法”がある』と揶揄するほどで、韓国では国民感情が憲法や法律を超越する。特に植民地時代の日本を巡る裁判では顕著で、国際常識が通用しません。そうした判決を出した裁判官が国民に英雄視されるケースもある」
先の徴用工裁判(2016年8月)では、三菱重工業側に一人当たり9000万ウォン(840万円)の賠償を命じた崔起祥・裁判官が、「共に民主党」の候補として昨年4月にソウル市衿川区から国政へ出馬し、当選を果たした。
「反日姿勢が顕著である文在寅政権では、今回の賠償判決を下した裁判官も、この判決が今後の出世の足掛かりになるのでしょう」(武藤氏)
※週刊ポスト2021年1月29日号