56回目を迎える京王百貨店新宿店の「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」は、“駅弁の甲子園”の異名を持つ人気イベントだ。コロナ禍の今年は、来場客同士の距離をとりながら1月7日に開幕した。
この伝統のイベントで毎回、大人気なのが昭和16(1941)年誕生の名物駅弁「いかめし」(780円:北海道函館本線森駅)。イカの胴に米(うるち米ともち米の混合)を詰め、甘辛のタレで煮た名物駅伝を届ける「いかめし 阿部商店」に密着した。
北海道森町の名物駅弁「いかめし」を手がける老舗調製元「いかめし阿部商店」は、第1回大会(1966年)から今回の第56回大会まで連続して出店している。今年も北海道から熟練職人たちが実演販売のために出張してきた。朝6時から会場裏手の厨房で調理を開始。米をイカに詰める技は驚きの早さだ。
明治36(1903)年に創業した初代の甥である2代目の父から、昨年5月に3代目を継いだ今井麻椰社長(29)がコロナ禍での出店についてこう語る。
「いかめし屋の一人娘として京王さんの駅弁大会には物心がついた頃から来ており、学生時代から手伝ってきました。弊社が過去で最も苦しかったのがコロナ感染拡大で全国各地の物産展が相次いで中止となった昨年。感染防止対策を徹底して今大会が開催され、今年も参加できて嬉しいです」
今井社長はBSフジで学生キャスターを務めた経歴を持ち、現在もレポーター活動を継続している。
「いかめし」は実演販売駅弁の販売個数ランキングに君臨し、昨年大会まで50回大会連続1位(通算52回)の記録を樹立。今年から殿堂入りとなっている。
撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2021年1月29日号