コロナ禍が続くなか明けた2021年だが、夏以降に危惧されるのが災害の発生だ。例年、ゲリラ豪雨や台風で河川の氾濫などが起き、多くの人が避難所生活を余儀なくされる。感染拡大が収まっていなければ、危機的事態が起きかねない。
「自然災害」と「感染症」の組み合わせは、大きな被害をもたらす。1995年の阪神・淡路大震災では避難所で季節性インフルエンザが流行し、2016年の熊本地震ではノロウイルスの集団感染が発生した。
昨年は本土への台風上陸が12年ぶりに「ゼロ」だったこともあり、避難所でのクラスター発生などはなかったが、今年もそうなると考えるのは都合がよすぎる。避難所・避難生活学会理事で新潟大学特任教授の榛沢和彦氏が警鐘を鳴らす。
「日本には災害担当の省庁がない。昨年9月の自民党総裁選で敗れた石破茂・元幹事長は創設の必要性を主張してきましたが、政敵にあたる菅首相は実現に動いてこなかった。その結果、全国の市町村がバラバラのマニュアルを作っていて、感染防止を考えた時に大きな問題となりかねない。
たとえば、感染防止に必須となるのが簡易ベッドです。ウイルスは床付近に多く、30センチ離れるだけで半分に減る。だから床から離れて寝る簡易ベッドが必要なのです。それなのに各自治体の対応にはバラツキがあって、簡易ベッドの備蓄などのための予算の手当ても十分ではないのが現状です」
新型コロナの感染拡大を受け、避難所の定員は減らされているが、それによる「定員オーバー」という問題も出てくる。
「昨年9月に台風10号が接近して避難勧告が出された際には、各地の避難所で定員超過が起きました。こうした避難所不足の問題への対策も進められていません」(同前)
もし“避難所クラスター”が続出すれば、どうなるか。最悪の事態を避けるためにも、今から早急な対策が求められるだろう。
※週刊ポスト2021年1月29日号