助けを必要としている人が、できる限り“自分らしい”生活を送れるように──介護職と家族は本来、同じ方向を目指しているはずだが、ちょっとしたボタンの掛け違いから、対立関係になってしまうケースは少なくない。こういった状況について、ホームヘルパーの藤原るかさんが語る。
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本来介護は長年の生活の中で培われた“本人らしさ” を守るための支援。ヘルパーが行う生活援助や身体介護は、たとえばどんな味付けが好みか、どんな部屋が落ち着くか、何が不快で何に困っているか……など、ご本人やご家族とのコミュニケーションを通し、よく理解した上で行うのが理想なのです。
しかし、現状の介護保険制度ではそういった話し相手などの相談業務はケアマネジャーさんの仕事。ヘルパーは分刻みで仕事をこなさねばならない仕組みになっていて、いちばん身近に接しながらゆっくりお話しする余裕がまったくありません。ヘルパーによっては“話しかけないでオーラ”を出してしまうかも(笑い)。
家族にも言えないご本人の本音も、直接感じられるヘルパーの本領を発揮しきれないのが本当に悔しい。それが実状です。
介護保険制度はまだまだ未成熟なのです。その複雑さゆえ、お任せになっている利用者(本人や家族)が多いのも現実。これから保険料も上がっていくのにそれでいいの? わからないこと、使いにくいこと、もっと利用者が声を上げるべきだと思います。渦中にいると声を上げにくいこともありますが、自分のこととして関心をもって。
それから長くヘルパーをやってきて思うのは「介護は生活」ということ。介護で困り事が起きたときは、慌てて正解を求めず、ゆったり構えて“どうしたらよいか”を介護職と一緒に考える姿勢でいると、よいのではないでしょうか。
【プロフィール】
藤原るか/訪問介護事業所NPO法人グレースケア機構所属登録ヘルパー。公務員ヘルパーとして勤務開始以来、30年近いキャリアを持つベテラン。在宅ヘルパーの労働条件向上、介護環境の適正化を求める国家賠償訴訟の裁判中。「共に介護を学び合い・励まし合いネットワーク」主宰。著書に『介護ヘルパーは見た』(幻冬舎新書)など。
※女性セブン2021年2月4日号