今度は受験会場での“マスク拒否おじさん”騒動だ。1月16日、大学入学共通テストで、マスクで鼻を覆うよう注意されても従わず失格となった49歳の受験生が、トイレに3時間以上立てこもったとして警視庁深川署に不退去容疑で逮捕された。当日の状況について、大学入試センターはこう説明する。
「(受験生は)複数の監督者から6回注意されても従わなかった。不正行為と認定された後も退去を拒み、英語のリスニングの前に他の受験生31人が別室に移動することになり、開始が予定より5分遅れました」(総務部)
逮捕された受験生は、注意されるたびに大声で反論していたと報じられており、同室にいた受験生は一生を左右する試験でとんだ災難に遭った。弁護士の高橋裕樹氏が語る。
「今後、試験を運営する大学入試センター側が受験生に損害賠償を請求するかというと、受験生を移動させたことによって経済的損失があったとは証明しにくいため難しい。同室だった受験生が試験を妨害されたとしてこの49歳の受験生に慰謝料請求することは可能です。ただ、たとえば騒がれたせいで試験中の精神が乱されたといっても、慰謝料の算出自体が難しく、認められたとしても数万円程度で、弁護士費用のほうが高くなるでしょう」
その“鼻出しマスク受験生”に続いて逮捕されたのは、元祖“マスク拒否おじさん”だ。昨年9月にLCC「ピーチ航空」の機内でマスク着用を拒否して客室乗務員にけがをさせ、運航を妨害したとして1月19日、大阪府警は私立大学職員の奥野淳也容疑者(34)を威力業務妨害と傷害、航空法違反の疑いで逮捕した。高橋弁護士が続ける。
「こちらは、裁判で有罪となればピーチ航空が(奥野容疑者に)賠償請求する可能性が高い。傷害罪での慰謝料の請求、そして到着先の変更で航空機の燃料代もかかり、遅延の補償も対象になり、その対応にあたった人件費や経費も請求する可能性がある。その賠償額となれば、数百万円から1000万円を超えてもおかしくない」
マスク拒否にもリスクはある。
※週刊ポスト2021年2月5日号