放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、宮藤官九郎による脚本で長瀬智也が主演する新ドラマ『俺の家の話』に寄せる期待について綴る。
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身も心も季節もすべて冬。こんな時はパッと明るくしてくれる男に限る。いま唯一の楽しみがTBSの金曜日に始まった(この号が出る時には第1回が放送済みだと思う)宮藤官九郎、源氏名をクドカンという脚本家のドラマ『俺の家の話』。
なんたって主人公の長瀬智也の役どころがプロレスラーだってんだからびっくり、クリビツテンギョーイタオドロ(びっくりぎょうてんおどろいた)である。ホームドラマの歴史の中で主役がプロレスラーなんて話、橋田壽賀子だって倉本聰だって書かなかったでしょ。写真を見るとまた長瀬が身体を作り込んじゃってきてるんだ。ふざけすぎた事を考える能力がクドカンは人一倍、いや人三倍くらいあるのだ。
クドカン&長瀬のタッグチームは過去に『池袋ウエストゲートパーク』『タイガー&ドラゴン』『うぬぼれ刑事』とテキサスヒット、ポテンヒットをつづけている。
『タイガー&ドラゴン』には私も“高田亭馬場彦”なる役で荒川良々の落語の師匠という、渋すぎて爆笑な役を演じている。この時長瀬(昼は噺家、夜はヤクザという二毛作男)の師匠を演じたのが西田敏行。師弟役から今回は本物の親子役である。
この西田がまた大変なお方で、全国に1万人の門弟を持つ二十七世観山流宗家。人間国宝。重要無形文化財「能楽」保持者。この父親が倒れて危ないというので、25年前に家出をした息子の長瀬が介護のために戻ってくるのだが、なんとそこには“後妻業の女”のような人が……。ひとクセありそうな妹なども登場し、プロレスラー、能楽、介護ヘルパー、遺産相続、ロバート秋山のラッパーと、なにしろアイテムが多すぎて訳分らなくなりそうな人生のバトルロイヤルだ。
フォールを決められるのか、リングアウトか。何しろ楽しみなこの1本(これだけほめときゃ、クドカン、大丈夫か?)。