要介護者が自立した生活が送れるように支えることが、家族と介護職の目指すゴール。しかし、片や家族の情にほだされ、片や介護保険制度や仕組みに翻弄され、家族と介護職が対立してしまうことも少なくない。
そんな望まざる展開を避けるために、家族は介護の何を知ってどう歩み寄るべきか──。訪問介護事業を行う「株式会社でぃぐにてぃ」の創業者で、自身も19才のときに事故で四肢麻痺となり在宅介護を受けてきた吉田真一さんに話を聞いた。
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訪問介護事業所を経営して7年。要介護者になってからは30年近く。生活にヘルパーさんが介入するストレス、介助してもらうおかげで家族の中で自立できる喜びはもちろん、介護家族である妻の葛藤も肌身に感じ、「介護を受けるプロ」とも呼ばれています(笑い)。
訪問ヘルパーとご家族とのトラブル……介護事業所の立場からは言いにくいことですが、ヘルパーという職業はスキルにかなり個人差があります。いまは介護職員初任者研修130時間のみで入職してくる。医師のような専門性はありません。
ベテランで秀逸なスキルを持つ人もいますが、みんなではない。
もう1つは介護保険制度の問題。たとえば生活援助では本人以外の食器洗いは皿1枚でもできないのが介護保険のルール。
本人、家族、ヘタをすると新人ヘルパーもルールに不慣れで、家族の皿を洗うかどうかといったことでもめることはよくあります。
制度の改善の余地は大いにあり、超高齢社会の一員としてはもっとしっかり学ぶべきですが、そんな現状であることも知っておいてほしい。
介護職と家族の間には敵対する種があちこちにあることも否めませんが、忘れてならないのは、私たちの縁由がひとりの要介護者である親御さんの幸せを守るために生まれた関係であること。いわば同盟を組んだ仲間です。
不都合を見つけて言い募るより、互いに歩み寄って改善を試みる方が、絶対幸せに近づけるとぼくは思います。
【プロフィール】
吉田真一さん/19才のとき事故で四肢麻痺に。在宅介護を受けながら大学卒業後、企業勤務を経て、訪問介護事業を行う株式会社でぃぐにてぃ創業。介護を受ける立場、介護家族である妻の苦労を知る立場から湧く理念「世界いち気持ちいい介護」の実現を目指して奮闘中。電動車いすの介護福祉経営士。
取材・文/斉藤直子
※女性セブン2021年2月4日号