日本では承認されていない中国「シノファーム(中国医薬集団)」製のコロナワクチンが密輸され、大手企業社長などが“裏道”を使って接種する事例が明らかになっている。しかし、富裕層や社会的地位のある人など、“コネ”をもつ人々が優遇されるのはワクチンだけではない。
感染が判明しても入院先が決まらず、自宅療養中などに急変してそのまま亡くなるケースが複数報じられるなか、病院にツテがある一部の人は、すぐに入院できるという現実がある。
「大学病院にツテがあった70代の男性は、感染が疑われる肺炎で入院手続きを優先してもらい、1泊6万円からの個室に入ったそうです。その大学病院のVIP病棟では、感染したお得意様向けにベッドが空けてあると聞きました」(都内にある病院関係者)
その現状について、医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広氏は「コロナに限らず病院はカネとコネばかり」と指摘する。
「以前勤務していた国立病院でも、政治家や厚労省の役人などを介して入院してくる患者がいました。一般の人はたらい回しにされるのに、です。病床数など医療資源の供給量が少ないからこそ起こる悪弊ですが、コロナ禍でも変わりません」
日本より、海外のほうがコロナ治療における格差は顕著である。
ファイザーとモデルナ両社製のワクチンが緊急承認されたアメリカでは、さっそく金持ちが動いていた。
米紙報道によると、ハリウッド関係者やIT長者が集まるカリフォルニア州では医師のもとにワクチン接種に関する問い合わせが毎日数百件も寄せられ、「病院に数万ドルを寄付するから先に打たせてくれと頼まれた」と医師が証言している。
ただでさえ新型コロナをめぐって社会の分断が叫ばれるなか、その打開策となるはずのワクチンが分断をより深刻化させるような事態はあってはならない。
※週刊ポスト2021年2月5日号