桑田真澄氏(52)が読売巨人軍の「投手チーフコーチ補佐」に就任する。桑田氏の指導とはどのようなものになるのか──。
就任発表から2日後の14日、桑田氏はジャイアンツ球場で行なわれた「新人合同自主トレ」を原辰徳監督(62)と見守った。この時、「たくさん走って、たくさん投げるという時代ではない。スポーツ科学の発展を重視すべき」と旧来の“投げ込み”“走り込み”を否定するかのような発言をしている。
しかし、一方で故・金田正一氏との対談(『週刊ポスト』2013年9月20・27日号)では、「走り込みは重要」「いいフォームを身につけるには投げ込まなければダメだ」「(自分が指導者なら)中6日ならもっと投げさせる。100球では少ない」とも語っていた。
一見、矛盾しているように思えるこれらの言葉をどう解釈すべきか。
2013~2014年に桑田氏が東京大学野球部の特別コーチに就任した際、共に臨時コーチとして指導した中日ドラゴンズOBの谷沢健一氏は、数少ない「指導者・桑田」を知る球界関係者だ。
「彼が言いたいのは“常に常識を疑い、自分で考えろ”ということでしょう。投げ込み、走り込みにしろ、科学的なウェイトトレーニングをやるにしろ、コーチの言いなりでノルマをこなすだけでは成長はない。きっと彼は選手に“自分が何をすべきか”を考えることを求めているでしょうね。
東大でも桑田は実演して技術を伝えるだけでなく、学生と一緒にビデオを見て打者の弱点がどこかディスカッションしたり、神宮の大観衆の前で最高のパフォーマンスを出すメンタルトレーニングを話し合っていた。キャンプインのとき、目的意識を持っていない選手は苦労するでしょうね」
そのリクエストは、大エース・菅野智之(31)に対しても例外ではない。桑田氏は会見で菅野について「まだまだ伸びしろがある。もう少し彼の潜在能力を引き出せれば」と語っていた。野球評論家の江本孟紀氏がいう。
「これまで菅野は自分より実績がはるかに劣る宮本チーフコーチらの下で自由にやってきた。今年から一軍投手コーチに昇格した杉内(俊哉)にはチームメイトのような感覚で接することができる。しかし、桑田が相手ではそこまで伸び伸びとはやれないでしょうね」