神の御業か、はたまた人の手によるものか──。全国には、剣豪が一刀両断したような切り口や、力で強引に押し開かれたような形など、奇妙な形状の巨石が点在する。世界中を巡り、国内でも約1000か所もの奇岩巨石を撮影してきた写真家の須田郡司氏は語る。
「神が降臨する巨石という意味の磐座(いわくら)という言葉があります。人々は石の持つ不思議なパワーを感じ、畏れ、祀ってきました。私は、今ではすっかり忘れられてしまった巨石信仰を多くの人に知ってほしいと思い活動しています」
人々が巨石に畏怖を覚えるのは、永遠性や不動性を感じられるからだという。山や巨木など自然に神を見いだして信仰する日本で、巨石を神に見立てるのも当然の流れだろう。
「ぜひ実際に訪れて、石に触れてみてください。人間の小ささや地球の息吹のようなものを感じることができるはずです」(須田氏)
世界中の神聖なる奇岩巨石を撮り続ける“巨石ハンター”須田氏の作品の中から、『鬼滅の刃』で注目を集める“聖地”など全国から8か所を厳選して紹介する。
【島根】『天馬山の割石』(島根県安来市広瀬町上山佐)
「全国からファンが訪れる“鬼滅”の聖地」
標高約250メートルの山頂付近にある直径約6メートルの割石。花崗岩が風化する過程で割れたもので、中心部分からきれいに割れている。漫画『鬼滅の刃』に登場する岩に似ていると、全国からファンが訪れる聖地に。
【奈良】『一刀石』(奈良県奈良市柳生町柳生岩戸谷)
「伝説の剣豪が残した刀痕」
天乃石立神社境内にあり、高さ約2メートル、約7メートル四方、中央から縦に割れた巨石。剣豪・柳生石舟斎が天狗と試合をした際に、天狗を切り捨てたつもりが、その場の巨石を割っていたとの逸話が残る。
【三重】『桃太郎岩』(三重県南牟婁郡御浜町片川)
「寓話の世界が浮かび上がる不思議な割石」
高さ約3メートル。おとぎ話の桃太郎が生まれた桃のような形をしていることから名付けられた。この地に洪水が発生した時に、片川川の上流から流されてきた巨石がここで割れたとされる。