一刻も早く収束して欲しい新型コロナウイルス騒動だが、日本では思わぬ事態が生じている。“受診控え”により、「医原病」が減っている可能性が指摘されているのだ。
医原病とは、医療ミスや過剰医療などによって、体調不良や病気が引き起こされること。医原病は、そもそも新型コロナとは関係がなく、日常的なものだ。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学が2016年に発表した調査では、アメリカ人の死亡原因の第3位は医療ミスや過剰な医療といった「医療過誤(医原病)」によるもので、アメリカ国内で年間25万人以上が死亡すると推計される。自宅や老人施設で亡くなった患者は数字にカウントされていないので、実際にはさらに多くの人が医原病で亡くなっているともいわれる。
もちろん病院は病気を治療するためにある。一方、治療自体がリスクとなることもあるのだ。新潟大学名誉教授の岡田正彦さんが指摘する。
「日本もアメリカも、医原病の問題は共通です。背景には『医療に対する妄信』がある。医師も患者も『血圧が高ければ下げればいい』『がんは早く見つかった方がいい』などと思い込んでいますが、実は医療の中には効果がなかったり、逆効果になったりするものがあります。不必要な治療は結果として、健康寿命を縮める原因になるんです」
死に至る医原病には3つのタイプがある。1つめは「薬の不適切投与」だ。
「具体的には、薬の投薬ミスや不要な薬剤投与、思わぬ副作用による体調不良などです。時にはそうした不適切投与で患者が亡くなるケースがある。高齢者の場合は複数の診療科を受診する人も多く、多剤併用のリスクが高い」(岡田さん)