NEWSポストセブンでリポートした「トランプ・チャンネル」が大きな反響を呼んだ。トランプ氏がデジタル・メディアを立ち上げて得意の政治ショーを自ら主宰し、トランプ氏に忠誠を誓う保守派議員だけ出演させることで、共和党に踏み絵を迫るというシナリオである。いわば共和党の「トランプ院政」だが、早くもそれが現実になりつつある。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がリポートする。
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事実は小説より奇なりというが、実に奇妙な政治ショーが展開されている。フロリダの別荘に引きこもったトランプ前大統領は、苦々しい日々を送りながらゴルフで自分を慰めているかと思いきや、そんなことはないようだ。
共和党下院のリーダーであるケビン・マッカーシー院内総務は56歳。2016年の大統領選挙では早くからトランプ支持を表明した一人で、2018年には院内総務を決める党内の選挙で圧勝し、若くして下院トップに君臨した。共和党の次世代エース候補だ。
そのマッカーシー氏は、1月6日の連邦議会議事堂乱入事件について、トランプ氏を厳しく批判した。トランプ氏の演説が暴徒を激励していたと怒り、「トランプ大統領はこの事件に関与しており、責任がある」と明言したのである。共和党議員の大半が周囲と保守派有権者の顔色をうかがっているなかで、勇気ある内部告発だった。
ところが、1月末になって事態は予想外の展開を見せる。マッカーシー氏はフロリダのトランプ邸に乗り込んで、トランプ氏の態度を戒めるのだと、勇んで出かけていった。トランプ氏はマッカーシー氏の批判を聞いて激怒し、二人は決裂したと見られていたから、この対決に国民は注目したのである。が、なんと会談した二人は意気投合、トランプ邸を後にしたマッカーシー氏はすっかりトランプ支持に戻っていたのである。
いったい何があったのか。共和党関係者に聞くと、こんな答えが返ってきた。
「最初から喧嘩がフェイクなのだ。トランプを批判すればカッコいいし、トランプに会って和解すれば、トランプ支持者にも他の共和党議員にもよく映る。マッカーシーの狡猾な芝居を見て、これから真似する議員が増えるだろう。今の共和党には、トランプ以外に国民を惹きつけられるリーダーはいない」